「旅」のことのはぐさ

タイトルの「ことのはぐさ(言の葉ぐさ)」とは話題のことです。旅の話題を幅広く掲載したいと思っています♪

【三重・熊野】エメラルドグリーンに輝く滝壺を持つ、布引の滝(前編)

布引の滝と言うと、神戸市生田川の滝が有名ですが、熊野の地にも同名の名前を持つ、滝が存在します。神戸の布引の滝に知名度は、劣るとはいえ、日本の滝100選にも選定されており、巨大な花崗岩の一枚岩を流れる姿と美しい滝壺は大変見応えのある景色でした。

アクセスの道すがらの廃校

まずは、熊野市役所の前、熊野市紀和鉱山博物館の前から県道780号線を進みます。少し余談になりますが、紀和鉱山博物館の前には、足湯があり、無料で楽しむことができます。泉質も良く、たいへん気持ちの良い足湯でした。

鉱山博物館の前には、鉱山鉄道も展示されていますので、見学がてら足湯を楽しんでみてください。

県道と名前は付いていますが実態は、まったくの林道で、ところどころ対面交通が難しい箇所があります。私は日曜日の3時ごろに行ったので、すれ違う車はほとんど無かったので、どうということは無かったですが、平日などは注意が必要かもしれません。

市役所から2〜3キロ進んだところに、小学校の跡地が見えてきます。明倫小学校との石碑が残されており、プールの跡なども確認することができます。

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今は、周囲に全く住居がなく、こんな場所に学校があるのが不思議なぐらいですが、かつてはこのあたりにも集落があったのでしょう。鉱山や林業でかつては、栄えていた名残ですね。

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校歌が案内看板に掲載されていました。2番には「東に布引、飛瀑はおどり」と歌われています。地元でも著名な滝として郷土の誇りとして愛されていたことが伺えます。

展望台や駐車場も整備されており、ちょっとした公園のようになっています。

訪れる人もなく、寂しい場所ですが、眺めは抜群でした。

 

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そのまま県道を突き進んでいくと、T字路にでます。市役所から約6キロぐらいの距離でしょうか。ここで県道に別れをつげ、左側の林道に入っていきます。曲がり角には、布引の滝と書かれた看板がでているので迷うことはないと思いますよ。

林道になったからといって道が荒れることもなく、ほとんど県道と変わらない状態。対面車両さえなければどうということのない道です。ちなみに往路では1回も車とすれ違うことはなく、復路で軽トラ1台とすれ違っただけでした。交通量は相当に少ないでしょう。

滝のパラダイス

道すがらに、「隠れ滝」と書かれた看板。橋の裏側に小さな滝が連続して続いているのを眺めることができます。小さな滝が連続していくつか続いています。一番奥まで見渡すことができず、その名の通り「隠れ」ています。

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そこから100メートルぐらいすすんだところで次は「松山滝」という滝が。残念ながら、木々が生い茂っており道路からは見えにくいです。隠れ滝よりは、だいぶ落差が大きいです。

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少し進むと、次は「荒滝」。こちらはかなり規模が大きく、布引の滝の4段目よりも大きいぐらいでしょうか。名前の通り、荒々しい凸凹とした花崗岩を流れる、暴れん坊の滝です。前の二つとは別格なレベルで大きな滝です。

残念ながら、駐車スペースが周りに全くないので、車を一瞬止めての車上からの撮影となりました。

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「荒滝」をすぎると、最後にお目当ての「布引の滝」を車窓から眺めることができます。観瀑台が歩道に設置されているが目印ですね。

観瀑台付近には駐車場がないので、安全のためにもいったん、ここは通り過ぎましょう。100メートルほど進んだ場所に、5台ほどのスペースがある駐車場があり、車を止めることができます。

布引不動尊へ

駐車場の前には、鳥居があり、先には荒々しい山道が続いています。こんなところに神社があるのでしょうかと思えるような急な登り道です。

登っていくと、ひときわ小高い場所にでます。そこから細い尾根をたどった先に、小さなお社が見えてきました。

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お社の正面は滝側を向いており、参道からだと裏から回っていくような形での参拝となります。ちょっと変わった配置ですね。おそらく、以前は仏像しかなかったのを整備したが、滝の方角を向いているのを参道側に変更するのは忍びなかったのでしょう。

建立した方々の滝と不動尊を敬う気持ちが伝わってくる、優しげな配置です。

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滝を見つめられるように、このように建立したのでしょう。残念ながら、木々が生い茂ってしまい、滝を眺めることは叶わなくなってしまっています。

この辺りは、「切らずの森」として原生林のまま保存がされていますので、生い茂った木を取り除くのもなかなか難しいのでしょう。水の落ちる音だけが、森の中に響き渡っているので、滝の存在を感じることができます。

(後編へ続く)

関連情報

滝を扱った過去記事を紹介します。

【岐阜・養老】養老の滝

著名な養老の滝 

【大阪・天王寺】新清水寺(音羽の滝)

大阪のど真ん中にある滝 

【三重・菰野】湯の山温泉(蒼滝)

湯の山にある滝、観光施設が台風で破壊されているのも見所の一つ?


 

【三重・熊野】社殿のない自然信仰の神社、花の窟神社

日本書紀の国生みの舞台として登場する、日本誕生の舞台とも言える神社。花の窟神社。社殿が存在せず、巨大な岩が神体となっています。

熊野地域は古くから続く、神仏融合の自然信仰が今なお残っており、明治以降の国家神道として、整理される以前の時代の信仰の形を今に伝えており、貴重な歴史遺産となっています。

神道の本場とも言える伊勢から比較的近いにも関わらず、おおらかな時代の神道の信仰形態が残っているのが、興味深いですね。近いと言っても交通の整備は遅かったようですので、行き来は少なかったと思います。そのあたりが、残った背景かなと。素人考えですが、、、

紀伊山地の霊場と参詣道」の一部としてユネスコ世界遺産にも認定されています。熊野尾鷲道路の延伸に伴い、売店や食堂、駐車場などが整備されたため、アクセスしやすく、観光地としての魅力も増しました。

目の前には、日本最長の浜辺とも言われる七里ヶ浜の風景も楽しむことができます。

 駐車場のあるお綱茶屋へ

神社の目の前にある、お綱茶屋に無料駐車場が整備されていますので、そこに車を停めるのが一番です。駐車場内には、真新しい清潔なお手洗いもあります。

鉄道で訪問する場合は、熊野市駅から歩いていくのが一般的なルートとなっていますが、距離的には隣の有井駅の方が近いです。

お綱茶屋は、お土産や地場の軽食を取り扱っていました。 

お茶屋さんを通りぬけると、「花の窟神社」と書かれた石碑と、鳥居が目に入ってきます。鳥居をくぐると、境内に入ります。うっそうと木が茂る静かな雰囲気の参道が100メートルほど続きます。

途中には、分かれ道があり横にそれるとお稲荷さんがありました。

まっすぐ進むと、社務所を越え、ご神体の巨大な岩の前に出ます。

ここまでの参道は階段などもなく、足の悪い方でも問題なくお参りできると思います。

素朴な祭壇

ご神体の巨石の前にでると、あまりの大きさに岩壁にしか見えません。

岩壁の前には、ささやかな祭壇が設けられており、幣だけが立っています。祭神は、国生み神話に登場する女性の神様「イザナミ」です。

国生み神話では、最初にイザナギイザナミが生まれ、二人の間からは様々な神が生まれていきます。イザナミは、火の神「かぐつち」を生んだ際に、火傷を負ってしまい亡くなってしまいます。その遺体が葬られたのが、日本書紀では、この神社として伝えられています。(古事記によると、ほぼ同様のストーリーが伝わっていますが、葬られた場所は熊野ではありません。)

この後、イザナギイザナミが亡くなったことが許せず、自分の子どもである「かぐつち」を斬り殺してしまいます。(その遺骸からも神様が生まれるのが、国生み神話のすごいところです。)

かわいそうな「かぐつち」は、イザナミの向かいに祀られています。

この後、イザナギイザナミを生きかえらそうと黄泉の国へ探しに出かけていきます。国生み神話は、古事記日本書紀に伝えられていますので、興味のある方は、現代語訳もあるので、一度読んでみてください。古事記の方が、登場する神様が活き活きとして、読んでいて楽しめるのでオススメですね。

ご神体とご神木をつなぐお綱

上を見上げると、花の窟神社の特徴である、ご神体の岩からご神木へ綱をまわしているのが見ることができます。毎年1回の祭礼の際には、このお綱をかけ直すのが、習わしとなっています。

かなりの高さの場所を通しているので、かけ直す祭礼は、たいへんな人気があり、多くの人が参拝に訪れるそうです。

国道を渡って七里ヶ浜

これで花の窟神社の参拝は終わりです。敷地はそれほど広くないので、ゆっくり見ても30分はかからないでしょう。

せっかく花の窟神社に来たなら、あわせて楽しんでいただきたいのが、国道42号線を挟んでむかいの七里ヶ浜です。

道路を渡ると、延々と続く砂浜の姿を楽しむことができます。20キロ以上もあり、日本でも最長レベルの長さなんだとか。鬼ヶ城の姿も遠景に眺めることができます。

西側の鬼ヶ城方面の風景。ここまでは、荒々しい岩壁が続く、リアス式海岸であることが見てとれます。

ここからは、延々と砂浜が続いていく、七里ヶ浜の風景。うってかわって穏やかな風景です。防砂林が海岸沿いに続いています。

次はどこへ行こう

 鬼ヶ城

車で10分ほどの場所にある、荒々しい絶壁の海岸。世界遺産にも認定されており、熊野観光の人気スポットです。目の前には、鬼ヶ城センターという周囲の観光拠点になっている施設があります。

【三重・熊野】鬼が住むと伝わる絶壁、鬼ヶ城

紀伊半島の南部、熊野市。古代からの巡礼の道として世界遺産になった、「紀伊山地の霊場と参詣道熊野古道)」が有名です。

そのひとつに含まれているのが、絶壁の名勝「鬼ヶ城」です。荒々しい名前の通り、急峻な岸壁が続いており、崖にへばりつくように細い遊歩道で周遊することが可能です。

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地元では、古くから知られた名勝の地だったようですが、本格的な観光開発は昭和初期に「日本百景」に選定されときからのようです。地元の人々の手によって、遊歩道が整備されたことが記録されています。

観光の拠点、鬼ヶ城センターへ

まずは、観光の拠点となる熊野市ふるさと振興公社が運営する「鬼ヶ城センター」へ。無料の広々とした駐車場が整備されており、建物自体も最近リニューアルされた真新しい建物です。

お土産屋、レストラン、カフェなどが併設されており、地元ならではの食事やお土産を購入したりすることもできます。那智黒石の置物や、新姫(熊野市の特産品の柑橘類、アレルギーを抑える効果があるらしいです。隣の北山村の特産品である「じゃばら」に似ているのかな?)の加工品などがあります。

駐車場の中には、漁協の運営する水産物直売所もありました。私が訪問した時は、時間が遅かったので、すでに閉まっていましたが、メニューを外から見ると、リーズナブルな値段(500円〜600円)で海鮮丼などを楽しむことができるようでした。干物などの水産物も販売してる様子です。営業時間が10時〜14時30分と少し短いので、興味のある方はご注意を。

鬼退治の伝説が残る島

鬼ヶ城センターの横から、鬼ヶ城への遊歩道が始まります。まず最初に目に入るのが、小さな岩だらけの小島が海に浮かんでいるのが目に入ります。

「魔見ケ丘(まみるがおか・マブリカ)」と呼ばれています。

その昔、坂上田村麻呂将軍が鬼退治に来た時に、鬼が岩戸に篭って攻めあぐねていました。その時、どこからともなく現れた童子が、島の上で舞を舞い、鬼が興味を持って岩戸を開けた瞬間に、坂上田村麻呂が弓を射って鬼をしとめたという伝説が残っています。舞を舞った童子は、千手観音の化身とも言われています。

右にある小さな2つの小島が、魔見ヶ丘です。青い海と空で本当にきれいでした。

舞を舞うにはギリギリの大きさですかね。ぴょんぴょんと跳びうつって舞っていたら見たくなっちゃいますよね(笑)

天然の石舞台、千畳敷

遊歩道をさらに進んでいくと、段々と岩肌が露出した荒々しい景色へ。岩を削り取って通路にした小さな洞門が見えてきます。

洞門を越えると、真っ平らな場所が広がり、石舞台のようになっています。古い時代にまだ海に沈んでいたときに侵食されて、えぐり取られた跡です。上からは岩が迫ってきており、規模・迫力ともに満点。階段を上る人の大きさと比べてください。

この場所は千畳敷と呼ばれています。ここまでは、バリアフリーの遊歩道で、お年寄りや小さな子供づれでも十分に訪問できると思います。

千畳敷から先は、遊歩道も狭くなり、石を削り取って作った階段が続きます。続いて奥の木戸と呼ばれる、こぶりな平場へ出ます。ちなみに左側の風化が進んだ階段は、古い時代に整備された遊歩道のなごりです。だいぶ丸くなっていますね。これと比較すれば、今の遊歩道はだいぶ歩きやすくなっていることがわかります。

残念ながら、台風の影響で遊歩道が壊れてしまっており、この先に進むことはできません。写真の中ほどに、茶色い柵がかろうじて見ることができるのが遊歩道です。細い報道が岸壁にへばりつくようにして存在しています。

歩いてみたら迫力満点でしょうね。ぜひ歩いてみたいですが、それだけに危険も多いのでしょう。現時点で復旧の見込みが立っていないようです。

下側に風化がすすんでいるギザギザした階段のようなものが見えますが、これは昔の遊歩道だと思われます。前後にも道だったらしきものが続いています。

波の高い日にはさらわれちゃいそうな、危険な遊歩道ですね。昔の鬼ヶ城観光は命がけですね。

2016年9月現在の遊歩道の通行状況

反対側(西側)から回ったらそばまで行けるのかというとそうでもないようです。

現時点では、西側からの遊歩道はほぼ入口付近で閉鎖されており、ほとんど歩くことができないようです。閉鎖区域にも神社など見所がたくさんありそうなので、悔しいですね。再び、道が通れるようになったらもう一度、訪問してみたいです。

鬼ヶ城センターには、どこまで通行できるか案内看板が出ています。波が高いときは、もっと厳しい通行規制が敷かれることもあるそうですのでご注意を。

鬼ヶ城の名前の由来

サミットで一躍有名になった、志摩から、険しいリアス式の海岸がこの鬼ヶ城の少し先まで続きます。この先は、延々と砂浜が和歌山県との県境まで続いて行きます。それだけに、この鬼ヶ城は、景勝の地というだけでなく、古くは軍事上の要所でもありました。

鬼ヶ城という名前は、鬼の伝説だけでなく、実際にこの地に城が建てられたことから名付けられた名前でもあります。信じられないことですが、この絶壁の上には城跡が残されており、駐車場横から散策道路が続いています。時間がなくて訪問は、叶わなかったのですが、上まで登ると堀や石垣の跡が少し残っているようです。また、城跡から熊野古道まで続く道路もありますので、熊野古道散策のついでに訪問することも可能です。

鬼交差点は退治された!

鬼ヶ城というとかつては、トンネルから出ていきなり交差点があり、そこを曲がってセンターへという、ドライバー泣かせの鬼交差点だったらしいですが、今は300メートルほど鬼ヶ城へ行くための道が本道を並走して、安全な場所で曲がれるように交差点の場所が移設されていますのでご安心を。

かつての合流地点だった場所です。本道とセンターへ行くための専用道路が並走するような形になっています。鬼をイメージしたと思われるモニュメントが出迎えてくれます。鷹みたいに見えますが(笑)

鬼ヶ城観光のためだけに、併設道路は、橋で海上にせり出すような形で建設されており、力の入れようが伺えます。熊野尾鷲道路の延伸に伴い、高速道路の終点そばにある、鬼ヶ城を観光の目玉の一つとして大々的に売り出していこうという、熊野市の施策の一つらしいです。

鬼ヶ城の景観は、地元が押すだけあって一見の価値ありと言えるでしょう。新宮市からも1時間かからず訪問可能な場所にあります。南紀・熊野観光の際にはぜひ、訪問してみてください。

次はどこに行こう?

花の窟神社

鬼ヶ城から車で10分程度。道路を挟んで向かいには日本で一番長いと言われる七里ガ浜があります。砂浜からは、遠景で西側からの鬼ヶ城の姿(鬼ヶ城センターからは反対側になります。)を眺めることもできますよ。 

 

ほくしょう

鬼ヶ城から車で10分程度。熊野尾鷲道路の終点そば、駅の付近にある、魚料理と中華そばのお店。夕食に炙りマグロ丼をいただきましたが、1000円であら汁までついており、たいへん美味でした。地元の人がひっきりなしに訪れており、ラーメンも大人気のようです。本当は、お酒と一緒に魚を食べたくなるようなお店でしたが、車なので残念無念。駐車場もあります。

営業時間:11時〜13時30分、17時〜21時(月・火休業)

住所:〒519-4322 三重県熊野市大泊町80

丸山千枚田

鬼ヶ城から車で30分程度。山中に広がる、手入れの行き届いた棚田群。未来の子供たちに残したい風景として、ユネスコの未来遺産にも認定されています。千枚田といいますが、実際には1300枚近くあるそうです。一時は現在の半分ぐらいの規模にまで衰退し、存続も危ぶまれた時期もあったそうですが、今は地元保存会を中心としたボランティアの手によって景観が維持されています。

布引の滝(オススメ)

鬼ヶ城から車で40分〜60分程度。道が細い。熊野市役所から林道を10キロほど進んだ場所にある、美しい滝。「日本の滝百選」にも選定されています。花崗岩の巨大な岸壁を静かに流れるその姿は一見の価値があります。道中には他にもいくつか規模の大きな滝があり、滝好きには大満足のスポット。