【三重・熊野】社殿のない自然信仰の神社、花の窟神社
日本書紀の国生みの舞台として登場する、日本誕生の舞台とも言える神社。花の窟神社。社殿が存在せず、巨大な岩が神体となっています。
熊野地域は古くから続く、神仏融合の自然信仰が今なお残っており、明治以降の国家神道として、整理される以前の時代の信仰の形を今に伝えており、貴重な歴史遺産となっています。
神道の本場とも言える伊勢から比較的近いにも関わらず、おおらかな時代の神道の信仰形態が残っているのが、興味深いですね。近いと言っても交通の整備は遅かったようですので、行き来は少なかったと思います。そのあたりが、残った背景かなと。素人考えですが、、、
「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部としてユネスコ世界遺産にも認定されています。熊野尾鷲道路の延伸に伴い、売店や食堂、駐車場などが整備されたため、アクセスしやすく、観光地としての魅力も増しました。
目の前には、日本最長の浜辺とも言われる七里ヶ浜の風景も楽しむことができます。
駐車場のあるお綱茶屋へ
神社の目の前にある、お綱茶屋に無料駐車場が整備されていますので、そこに車を停めるのが一番です。駐車場内には、真新しい清潔なお手洗いもあります。
鉄道で訪問する場合は、熊野市駅から歩いていくのが一般的なルートとなっていますが、距離的には隣の有井駅の方が近いです。
お綱茶屋は、お土産や地場の軽食を取り扱っていました。
お茶屋さんを通りぬけると、「花の窟神社」と書かれた石碑と、鳥居が目に入ってきます。鳥居をくぐると、境内に入ります。うっそうと木が茂る静かな雰囲気の参道が100メートルほど続きます。
途中には、分かれ道があり横にそれるとお稲荷さんがありました。
まっすぐ進むと、社務所を越え、ご神体の巨大な岩の前に出ます。
ここまでの参道は階段などもなく、足の悪い方でも問題なくお参りできると思います。
素朴な祭壇
ご神体の巨石の前にでると、あまりの大きさに岩壁にしか見えません。
岩壁の前には、ささやかな祭壇が設けられており、幣だけが立っています。祭神は、国生み神話に登場する女性の神様「イザナミ」です。
国生み神話では、最初にイザナギとイザナミが生まれ、二人の間からは様々な神が生まれていきます。イザナミは、火の神「かぐつち」を生んだ際に、火傷を負ってしまい亡くなってしまいます。その遺体が葬られたのが、日本書紀では、この神社として伝えられています。(古事記によると、ほぼ同様のストーリーが伝わっていますが、葬られた場所は熊野ではありません。)
この後、イザナギはイザナミが亡くなったことが許せず、自分の子どもである「かぐつち」を斬り殺してしまいます。(その遺骸からも神様が生まれるのが、国生み神話のすごいところです。)
かわいそうな「かぐつち」は、イザナミの向かいに祀られています。
この後、イザナギはイザナミを生きかえらそうと黄泉の国へ探しに出かけていきます。国生み神話は、古事記や日本書紀に伝えられていますので、興味のある方は、現代語訳もあるので、一度読んでみてください。古事記の方が、登場する神様が活き活きとして、読んでいて楽しめるのでオススメですね。
ご神体とご神木をつなぐお綱
上を見上げると、花の窟神社の特徴である、ご神体の岩からご神木へ綱をまわしているのが見ることができます。毎年1回の祭礼の際には、このお綱をかけ直すのが、習わしとなっています。
かなりの高さの場所を通しているので、かけ直す祭礼は、たいへんな人気があり、多くの人が参拝に訪れるそうです。
国道を渡って七里ヶ浜へ
これで花の窟神社の参拝は終わりです。敷地はそれほど広くないので、ゆっくり見ても30分はかからないでしょう。
せっかく花の窟神社に来たなら、あわせて楽しんでいただきたいのが、国道42号線を挟んでむかいの七里ヶ浜です。
道路を渡ると、延々と続く砂浜の姿を楽しむことができます。20キロ以上もあり、日本でも最長レベルの長さなんだとか。鬼ヶ城の姿も遠景に眺めることができます。
西側の鬼ヶ城方面の風景。ここまでは、荒々しい岩壁が続く、リアス式海岸であることが見てとれます。
ここからは、延々と砂浜が続いていく、七里ヶ浜の風景。うってかわって穏やかな風景です。防砂林が海岸沿いに続いています。
次はどこへ行こう
鬼ヶ城
車で10分ほどの場所にある、荒々しい絶壁の海岸。世界遺産にも認定されており、熊野観光の人気スポットです。目の前には、鬼ヶ城センターという周囲の観光拠点になっている施設があります。