「旅」のことのはぐさ

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【和歌山】「戦前の軍事施設」と「戦後の観光開発」の跡が残る無人島、友ヶ島

観光で賑わった無人島「友ヶ島」

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和歌山市の西部にある、無人島「友ヶ島」。江戸時代以前から修験道の島として人が訪れていたと言われています。友が島から東に向かい、紀伊山脈を辿って行くルートがあり、修験道が盛んだった明治以前には多くの人々が修行をしていました。

戦争が迫ると由良要塞が建設され、民間人の立ち入りは厳しく制限され、民間人では修験道の関係者のみが特別に許可を受けて入る状態が続きます。

戦後になると、要塞は破棄され、砲台跡を観光資源として、戦前とは一転し観光の島として開発が始まります。一時は、南海電鉄が力を入れて開発をしていましたが、後に撤退。

現在では、地元の漁協や小規模な旅館が細々と営業を続ける状態となっています。

2010年代になってからは、大阪からもっとも近い無人島、煉瓦造りの放棄された要塞が、アニメ映画「ラピュタ」に出てくる、廃墟化した空に浮かぶ城に似ているということで人気を集めはじめます。

一方では、台風で埠頭が損壊し、長期間に渡って営業休止に追い込まれる、旅館の一つが廃業するなど、一進一退の状況が続いています。

埠頭付近は、観光開発の廃墟が残っているのも、静かな無人島をイメージしてきた人々には幻滅を抱かせることになるかもしれません。 無人島といいながらも、住所を友が島においている人が存在しないだけで、夜でも旅館やキャンプしている人がいるので、シーズンオフ(冬期)や荒天時を除いて人は駐在しています。

余談ですが、和歌山市で行われる選挙で不在者投票に行くと、理由選択欄には、「友が島に住んでいるため」という項目が選択できるようになっています。一人で「無人島ちゃうんかーい」、と突っ込んでしまいました(笑) 


船に乗って友ヶ島へ

和歌山市の西端にある加太から、友ヶ島行きの船が出ています。友ヶ島汽船という会社の船で、往復2,000円となります。

友ヶ島汽船株式会社 | 和歌山加太 友ヶ島(ともがしま)

余談ですが、加太には、人形供養で有名な加太神社や古い旅館、温泉などいろいろと興味深い、観光スポットが点在していますので、あわせて訪問してみるのも、オススメです。

埠頭に到着すると、小さな食堂(友が島荘)があり、いちよう自動販売機もあります。(ちょっと値段は高いですが)

後ろの方には、コテージだったらしきものがありますが、廃墟化しています。

最初の砲台、第一砲台へ

埠頭から右手に向かって第一砲台へ歩いて行くと、気になるのが海岸がとても汚いこと。

これは、海全体がキレイにならないと何ともならないことでしょうが、たいへんに酷い状況です。

(全てのエリアではなく、島の南西部のみに限ったことです。他の部分の海岸は普通の状態です。海流の関係で大阪湾のゴミが島に漂着してくるらしいです。)

途中では、野生のクジャクに出会いました。私は見かけることはありませんでしたが、鹿もいるらしいです。

10分ほどで第一砲台に到着。かなり崩落しており、外から見るだけ。海水がここまで来ることあるようで、ゴミが大量に漂着しているのが残念です。

崩落の原因も波による侵食の影響でしょう。煉瓦づくりの美しい建物ですが、ひどくぐちゃぐちゃに壊れています。ここは、あまりラピュタという雰囲気は感じられません。

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砲台の裏手は、電信柱があったり、井戸があったり、家が建っていたかのような平場があったりと、まるで集落の跡かのようです。民間人の居住はなかったはずですので、おそらく、軍人さんの住居の跡か、観光開発が今よりも盛んだった頃に職員住居でもあったのでしょうか。

まるで、廃村のような雰囲気です。水もあるので、キャンプをしている人をよく見かけます。廃村らしき場所を抜けると、砂浜にでます。こちらの海岸は、ゴミが漂着しておらず先ほどとは打って変わってキレイな場所です。岩肌がでているため、荒々しさを感じさせます。

友ヶ島灯台へ

崖を登っていくと、明治5年に建てられた、友ヶ島灯台があります。友が島の名物の一つで、日本でも最初期の灯台の一つです。現役ですが、実は廃墟と化した砲台よりもお年寄り。

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イギリスと結んだ、大阪条約という租税条約にもとづいて建設された5つの灯台の一つで条約灯台と言われています。

(日本最古の洋式灯台は、明治3年に建てられた観音崎灯台ですが、大正時代に地震で崩壊して現存していません。)

付近には、2002年になってから再発見されたという聴音所と、発電所の跡地があります。

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また、関西空港の関連施設の電波施設があります。この施設ができたことで、海底電線が引かれ、島での電力制限がなくなったらしいです。

 

それまでは、ずっと海軍のつくった発電所をだましだまし使っていたということです。発電所の跡にいくと、煉瓦づくりの建物に煙突がニョキと出ています。敵に見つかりにくくしたのか、半地下式になっています。今でも予備として使用できるように、整備されているとのこと。戦前の発電機がよく動きますね。

 

もっともラピュタらしい、第3砲台

さて、最後の訪問先は、もっともラピュタらしいと言われている第3砲台。他の砲台よりも規模が大きく、キレイに施設が残っています。内陸部にあることも影響しているのでしょうか。

真っ暗な通路を抜けると、いきなり煉瓦に囲まれた美しい場所に出ます。それまでの暗黒の通路との対比のせいか、ふぁといきなり視界が開けると、写真で見たよりも感動的にみえました。ラピュタらしいと言われるのもわかりますね。 水のたまった部分は少し凹んでいます。昔はここに砲台が据え付けられていたのでしょう。

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森に囲まれて静かな雰囲気です。とても軍事施設とは思えませんが、現役当時は物々しかったのでしょうね。 少し下ったところにある倉庫の跡もいい味が出ています。

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この辺りの写真が、観光パンフレットとかに使われることが多いです。

 

倉庫のすぐ横には、職員住居が残っています。日本家屋なのに、一部が煉瓦づくりになっているので、ちょっと違和感を感じます。壁はかなりボロボロですが、屋根や煉瓦づくりの部分はまだまだしっかりしています。今ならまだリノベーションできそうな気がしますね。

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ここから山を降りると、埠頭へ行くことができます。これで島を半周したところでしょう。

行ってみて

まだ、行っていない半分には修験道関係の施設などが点在しているらしいですが、今回回った部分ほどの見所はないようです。 また、機会があったら行ってみたいような気もしますが、体力をもうちょっとつけないと。

距離はそれほどでもないのですが、アップダウンが激しいので、坂道を歩く習慣がない私にはちょっと辛かったです。

アウトドアを楽しむ無人島というよりは、廃墟や近代遺産に興味のある方にオススメしたい場所です。観光開発の跡地好きにもたまらない場所でしょう。

訪問する際は、船に乗る前にお水などを購入していくことをオススメします。埠頭のそばで買うことができますが、お値段がちょっと高いです。

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