「旅」のことのはぐさ

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100年前の旅行スタイル〜大正時代のパスポートはどうだったの?〜

パスポートの申請というのは、今でも結構な手間がかかりますが、100年前の大正時代はどうだったのでしょうか?

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大正11年発行の海外旅行研究(海外事情研究会編)という本に、当時の旅行ノウハウが掲載されていましたので、ご紹介をしてみたいと思います。

対象時代には、すでに写真が貼られるようになりましたが、まだ手帳型ではなく、現在の国際免許証のような3つ折りの1枚ものの書類でした。(県によって若干の差異があったようです。)

写真が貼られる前は、用紙の特徴が記載されていたようです。なんて書かれるかドキドキですよね。

パスポート申請の必要書類

当時から、発券業務は県の業務となっており、書類や手続き方法については各県で差異があったようです。

東京の場合は、申請に必要なものとして、

 

非移民(留学、視察、商用、学術研究など)の場合

  1. 外国旅券下付願 1通(現在の申請書でしょう。)
  2. 写真 2葉(本では寫眞となっていました。写真の旧字ってこんなんだったんですね。)
  3. 戸籍謄本 1通 

となっています。

 

 

ちなみに、現在の必要な書類は同じく東京都で調べてみると

  1. 一般旅券発給申請書 1通
  2. 戸籍抄本または戸籍謄本:1通
  3. パスポート用の写真:1枚
  4. 本人確認のための書類:1点または2点

ぜんぜん、変わっていません。100年経ったのに。むしろ、本人確認の書類が必要な分、面倒になっています。(笑)

ただ、注意書きで県によっては、「財産証明書」「身元証明書」「履歴書」などを要求されるころもあると書かれており、先進的な東京だったから簡便なのかもしれません。

申請書の地方差

外国旅券下付願が、東京都と岡山県の2パターン掲載されています。

いかにもシステマチックで、慣れているなと感じるのが東京。書く内容がきちんと整理されていて、わかりやすいです。首都ですから、申請件数も多かったのでしょう。

一方で岡山は、文章で申請者がいちいち作らなければならないという面倒なシロモノ。何を書けばいいのか、戸惑っちゃいますよね。初めての人がすらすら書けるものでは、ありません。それだけ海外渡航が珍しかったのでしょう。

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当時は、1回の渡航ごとに、渡航地と理由を述べて、申請をする必要がありました。期限も半年で、期限までに出発しなかった場合は、再度の申請をするしかありません。このあたりは、海外渡航が特別な出来事だったということをうかがわせます。

パスポートの発券費用

さて、費用については、移民は5円、非移民は10円となっています。

当時の賃金価値を出すのは、なかなか難しいのですが、大正14年は、お米が10キロで3,2円となっています。乱暴ですが、お米が、おおよそ30キロちょっとというところでしょう。今ですと10キロ4,000円ぐらいですかね。30キロなら12,000円。パスポートは5年ですと11,000円ですので、大きくは変わらないというところでしょうか。

中国渡航は、パスポートが不要だった 

時代が違うなと感じるのが、外国でも中国の日本人居留地満州については、旅券がなくても行けたということ。ただし、中国内地については、旅券がないと罰金刑を課せられるので、「護照」という書類があったようです。居留地というのは、満鉄付随地や租界のことを指し示していると思われます。

現在の中国語で「護照」ではパスポートを指すため、検索情報が混ざってしまい、古い中国の時代についてインターネットの検索では調べきれませんでした。

(資料によっては、大正7年に日中双方の渡航者に対して、旅券の免除が確認されていたとの記録もあるので、この本が少し古い状況を記載しているのかもしれません。実際の取り決めがどうであれ、中国に行く人は、取り決めの前から、ほとんど旅券を持たずに行っていたみたいです。)

 渡航目的は大きく変わった

移民についてのページを多く割いており、当時の渡航者の多くを移民が占めていたことが伺えます。

「観光」という項目はなく、興味本位の旅行でも「修学」を目的としていなければ、許されない風潮があったようです。

 渡航目的は、現在とは違うなと感じさせられます。ただ、手続きなどは、面白いほど変わっていません。

2019年には、富嶽36景をモチーフにしたパスポートへ変更されるとのニュースが新聞を賑わしましたが、さて申請についても変わっていくのでしょうか。

香港のようにスタンプを押さない国も出て来ています。20年、30年すれば今のようなパスポートは過去のものになっているかもしれませんね。

(終わり)

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